以前書いた抵当権のお話は、抵当権は怖くないよ言葉のイメージに騙されないで。
という内容がメインでした。
あと付従性だか随伴性だかのいかにもテスト対策な用語の意味です。
今回からはもうちょっと具体的に抵当権を見ていきましょう。
抵当権は約定担保物権です。
ハイ覚えていますか~その1約定とは~ はもういいとして、
大事なのが物権の意味をもう一度振り返ることですね。
物権とは 排他的な支配権でありました。
ですが抵当権こと約定担保物権を設定した場合、
その不動産の排他的支配権を行使できるのは誰でしょうか?
はい、所有者ですよね。ビル一棟借金して買ったオーナーが店子さんいらっしゃ~いするはずが、
融資した金融機関が店子さんいらっしゃ~いするんじゃ、オーナーさん借金した意味がありません。
なので抵当権における約定担保物権のうちの物権とは、担保権を行使できる物権と考えましょう。
使用・収益できるのは抵当権者でなく、所有権者。物権の意味を間違えないように。
ついでに言えば、抵当権者は占有をしている状態にはありません。
占有していないので、表面上は抵当権の存在など分かりません。
そりゃそうだ、街歩いてて「お、あの豪邸ってば3番抵当までついてるぞ」なんて余計なお世話だコラ。
なので登記の手段を持たないもの、動産・債権に抵当権は設定できません。
分かる手段があるものだけ、抵当権設定は可能なのです。
あくまで可能だからね。それをちゃんと登記するかは更に別の問題です。
抵当権の範囲
じゃあ抵当権者が行使できる物権、すなわち、
債務不履行の際に競売にかけて優先的に弁済をうけられる範囲って何?
登記があるので、土地もしくは建物そのものを売った額は、弁済を受けられます。
じゃあ入り口ドアを紫禁城みたいに改装して、独立した財産のように見えてもそれも競売しなきゃダメ?
じゃあエントランスにタイガーバームガーデンのようなステキ建築物を設置した場合、それも競売しなきゃダメ?
そんな時の民法です。
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。 ~後略
じゃあ何を付加して一体となっている物と規定するか。これも民法です。
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
意味するところは、不動産にくっついちゃった物は付合物として競売にかけられます。
なので凱旋門のような入り口作っても一緒に売られちゃいます。
後半のただし権原~は、例えば地上権者が植えた苗木は、地上権者の物ってわけ。
しかしこの権限による留保は、弱い符合だけ認められるそうです。
建物の増築は強い符合なので売られちゃいます。
強い弱いってどの程度だよ!昔のアンチェインと今のアンチェインぐらいか!!
実際は判例による部分大なので、建物の増築部分と・土地建物から動かせない物ぐらい押さえておけば。
次の条文です。
1、物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2、従物は、主物の処分に従う。
付属させた物は主物に従う、なのでステキ建造物も持っていかれちゃいます。
いやこの場合、重いから動かせないなら付合物であり、動かせるならその独立性を認められて従物になるでしょう。
いや付合物も従物も持って行かれちゃうのは一緒ですが、実は決定的な違いがあります。
抵当権設定後の従物は、抵当権の範囲は及ばない(判例)としています。
この辺が約定担保物権してますね。すなわち約定した時に認めてないものは担保じゃないのであります。
果実への範囲
果実の担保っていやいやいや、使用収益できるのは所有権者って言ったジャン、
抵当権者が果実を勝手にもいだら、そらエデンの園から追放されまっせ。
でもルールに則って果実をもいだなら大丈夫。現世にエデンなんて無いのだから……
は置いといて、条文です。
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
抵当権者は債務不履行であれば、知恵の実を食べちゃえますーじゃなくて、
知恵の実を競売にかけて、その代金から弁済を受けられます。
いやーいかにも商売人ですね楽園から追放されるわけですよそりゃ。
んじゃ法定果実に対してはどうでしょう?
ビルのオーナーが債務不履行になったとして、テナントの賃料に抵当権は及ぶ?
困った時の条文です。
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。
もういっちょ。
1、先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2、債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
はい304条の先取特権を抵当権にまるごと入れ替えてしまいましょう。
法定果実、分かりやすく賃料でも行使できると規定がありますね。
その後の文章にある滅失等を見ると、例えば焼損した場合の火災保険金にも抵当権は及んじゃいます。
ただし~の後に気を付けましょう。差し押さえないと優先的な弁済は受けられません。
何故か?
まずは一般債権者との区別です。債権者は何もしなければ平等なので、テナント賃料も債権者に平等に割り振られてしまいます。
抵当権者は優先されますよ、の線引を分かりやすくするためです。
次に、実際に賃料を払う店子さんの混乱を避けるためです。
差し押さえをしなければ、あれ、大家に払うの?抵当権者に払うの?となりますが、
差し押さえをすることで、誰に払うか明確になります。
散々言ってきた取引の安全ってやつ。
抵当権のお話はまだまだ続きますよ、徐々に分かりづらくなってきますんで、後日こっそり修正するの前提で学習していきましょう。
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