特権ですよ特権。
選ばれし者が優先的に受けられる権利です。気分は今流行りの上級国民様です。
しかも法定担保物権に分類されます。法定ですよ法定。
関知しない間に法律が、「アナタは権利があります」と言ってくれるのです。
国家のお墨付きがある貴族様に、今からアナタもなれるんですよ?貴族でも華族でもよろしいです。
そんなお得なお話がタダで聞けちゃう今日限り。ちょっと奥さん、隣の奥さんもぜひお誘いの上、
かま法事務所2階にお集まりくださいませ。現地集合現地解散2回目以降はこのツボを買っていただければなんと特権階級の大金持ちに…
先取特権とは、法律で決められた特殊な債権を持つ者は、他の債権者より優先的に債務者の財産から支払いを受けられる権利 を指します。
法律・法定というところがポイントです。自分が意識せずとも、この特権を取得している可能性があるという点で、
まさに知っておくと得をする、おばあちゃんの知恵、どころか
カネがかかっているので血みどろの戦争を出し抜ける知恵なのであります多分。
ではまず一般の先取特権の条文を紹介しましょう。
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
1、共益の費用 2、雇用関係 3、葬式の費用 4、日用品の供給
共益の費用とは何か、など細かい規定が民法307条から民法310条に規定されていますが割愛。
これも昔に書いたことではありますが、覚えているでしょうか?債権者平等の原則。
資力100万の債務者に、登記等していない債権者が二人いました。
債権者Aは100万、債権者Bは400万 債務者に貸していました。
回収できるのはそれぞれの債権で割って、Aは20万 Bは50万。これが債権者平等の原則です。
しかし一般の先取特権で規定されている債権者は、これら平等の債権者よりも優先的に弁済を受ける権利があります。
先取特権の中にも優先順位がありまして、それが306条に振られた1~4番の順番となります。
共益の費用。すなわち債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産は最優先で弁済を受けられます。
例えばなんでしょうねぇ。債務整理に入った会社に債権者が沢山押しかけてきました。
債権者の一人が「まあここは落ち着きましょう」と言って債権者の皆さんにジュース配りました… これは共益費じゃないな。
多重債務者の居場所を知るために、債権者の一人が旅費交通費使って居場所を突き止めた。これなら共益費にあたるでしょう。優先的に弁済を受けられます。
が、こんなもんはオマケです。真の債権に関しては何の弁済も受けていません。
次、これがポイント。雇用関係の先取特権です。
すなわち会社が潰れて財産を整理している段階だと、他の債権者よりも、給与を受け取る資格のある人間が真っ先におカネを受け取れるのです。
ただし残念ながら、登記ある抵当権には負けます。自社ビルなんかは当然抵当権に入っているでしょうし、この辺お金のプロは抜かりなくやるでしょう。
条文の規定もあるので見てみましょう。
1、 一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
2、 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
資金が色々ヤバイって所ならば、不動産に何らかの登記が設定してあるのが当然でしょうし、
一般の先取特権は、残念ながら不動産の資産価値に対しては、特権といえるような物は持ち合わせていません。
そして給与所得者同士が、自分だけ知っていることを理由に同僚を出し抜けるか?残念ながらそうはいきません。条文です。
同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
どんどんトーンダウンしてます。ちょっとアンタ貴族様になれるんじゃないの!?
いやほら、一般債権者に勝てるってだけでも有用な知恵ってことで一つご勘弁を。
動産の先取特権
今度はおカネじゃなく、債務者のモノを先取りできる特権です。こちらも条文をば
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
1、不動産の賃貸借 2、 旅館の宿泊 3、旅客又は荷物の運輸 4、動産の保存 5、 動産の売買 6、種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給 7、農業の労務 8、工業の労務
例えば店子が不動産の賃料を仕払わない場合、例えば無銭宿泊した場合、身ぐるみを剥がすことが出来ます。
あーゴメンちょっとウソ。たとえそんなクソ債務者でも、生活最低限のものは先取できません。
それに一応弁済の履行期がありまして、履行期前にやったらただの山賊です。
身ぐるみ剥がすマンガじゃ無いからコレ。
おカネじゃないって所がポイント。この動産に対する先取特権は、前に述べた一般の先取特権に勝ちます。
動産をおカネに変えれば一般の先取特権と対等な気もしますが、
それでも動産の先取特権者が勝ちます。
なんだか思った以上に給料って保護されませんね。
そんなアナタにスカッとする条文を一発。
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない
なんと!動産は第三者に引き渡してしまうと先取りできません!
しかも善意悪意関係ありません!当事者の債務不履行に悪意の第三者に引き渡しても先取りできません!
この一文のおかげで動産の先取特権者も結構なハイリスクを抱えている事が分かりました。
…うーん今の御時世考えると、茶化して説明するのは問題ある気がしてきました。
今更。
特権と言う割にザル法ですが、まぁザルと知るのも良い知識ということで一つ。
不動産の先取特権
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の不動産について先取特権を有する.
1、不動産の保存 2、不動産の工事 3、不動産の売買
不動産にも先取特権が存在します。
保存とは修繕行為のことですね。そしてこれらは一般・動産の先取特権と違い、
登記されます。 悪意の第三者に引き渡されようが、登記あるので対抗できますね。
不動産の先取特権も、一般の先取特権者に優先します。
動産の先取特権者とは同順位ですが、こちらは登記があるので先取特権があるのこと証明も簡単になります。
そして保存と工事に関しては、抵当権に勝ちます。
本来の登記は、弁済を受けられる内容の登記ならば、登記された順位によって優先される弁済先がきまりました。
その原則を破っているのが、この保存と工事の先取特権です。
原則を破る、即ち例外というやつは試験で出やすい所です。
ぶっちゃけ先取特権は特権といえる程特権でもないので、試験対策としてはテキトーでよろしいかと思いますが、
保存・工事の債権は最優先で弁済を受けられる、ぐらいは覚えておきましょう。
ちなみに売買と抵当権でどちらが勝つかは、原則通り登記の順位によります。
では最後に。税金と先取特権、どちらが優先されるでしょうか!?
国税は、納税者の総財産について、この章に別段の定がある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だつて徴収する。
だってよ、結局公務員が貴族様ってことじゃねぇか調べなきゃよかったかいさーん。
でも不動産保存と工事の先取特権は税金に優先するんだって。やったね!
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