今回は地役権です、チエキケン。
「用益権」なのに「地役権」です。
利得を得るのが目的ならば、同じ益の字使ったほうが分かりやすくない?と思ったのですが、
役の字の成り立ちを調べますと、働かせるというのが大本の意味だそうです。
なるほど、土地を働かせて益をもたらす。
土地についてくる排他的な支配権なのに消滅時効がある権利の一つ、なんて暗記勉強するよりも、
言葉の意味を知れば本質を理解するのに手っ取り早いという事実。いい見本になりました。
ところで役不足と役者不足ってどっちがどっちだっけ?
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
所有権の限界とは、使用・利用・処分だけど秩序を超えちゃいけないよ、と言っています。
たとえば地役権があるからといって、
ここはボクに権利あるんだから勝手にお墓作って土葬しちゃうよ文句ないでしょ!?
とは言えませんし、そもそもそういう権利じゃありません。
それが1行目の土地の便益の部分。
お墓を作るのは人間のためであり、土地のためじゃありません。
そもそも土葬が日本では禁止だから公の秩序に反してダメ、
につなげようと思ったら、日本は土葬アリだそうです、ハードルは高いが。
じゃあ土地の為って何?といえば、
例えば土地の周りを崖が囲んでいて、他人の土地に入らないと外に出られないような土地、
に対して、その土地じゃ仕方ないから通ってヨシとする権利です。
単に通ってヨシ、だと人間に対する権利になっちゃいます。つーか関所です。
あくまで土地が不便だからしょうがないにゃあ、を実現する権利ここ押さえておくように。
で、出られないよ!な土地を要役地、じゃあ通っていいよ!な土地を承役地と言います。
地役権を設定したよ!は承役地に登記します。つまり働かせる側の土地に記録を残すんですね。
登記事項は要役地、地役権設定の目的、地役権設定の範囲、なんですがここでは割愛。
大事なのは料金等の対価は登記されない、でも要役地は登記されるってことです。
不動産売買の事例で見たことがあります。
例えば、買おうと思っていた土地が要役地でした。
不動産屋が言うには、承役地の所有者は特に何にも言ってこないので気にしなくてOK、として販売しました。
しかし承役地に相続が発生し、相続人は通行料を求めてきました。
最終的な解決方法は忘れたゴメンなんですが、多分じっくり話し合うか訴訟しかないんでしょうね。
まそんなリスクがあるってことです。しかも要役地側は登記されませんし、
重要事項説明であったかどうかも忘れたゴメンなんですが、不動産は現地を見てから買いましょう。
地役権の特性
通行だけではなく、眺望のためにも地役権は設定できます。
要役地の眺めを良くするため、承役地では高い建物建てちゃダメ!
ん、それって人のための権利違います土地のための権利なので認められます。
結局丸暗記学習じゃんは置いといて、もし不動産売買で承役地を買った場合、
用役地の便益は義務です。高い建物はダメ、なんて明らかに不利な条件でも、
便益のためなら守らなければなりません。
ために不動産売買で承役地の登記がある場合、相場より低く販売されるケースもあるそうです。
この辺は承役地要役地で相談して、便益の対価は勝手に決めてくれってことなんでしょう。
売買の例でとっくに出してある通り、地役権は土地の処分、譲渡をしても付従性があります。
個人にくっついてくる訳じゃなく、土地にくっついてくる権利なので、
土地の所有権と地役権は一蓮托生です。
でも地役権は、要役地権者と承役地権者の合意で抹消させることが出来ます。
ただし要役地に抵当権設定された場合は、抵当権者の承諾なければ抹消できません。
他地役権は消滅時効にかかります。
こっちは排他的支配権なのになんで消滅すんの?の理由が分かりやすいですね。
なぜなら対価が発生する可能性が大きいから、
権利を行使しなければ、消滅時効にかかってもおかしくありません。
具体的に20年行使ないときは、時効により消滅します。
承役地の地権者は、地役権の登記を抹消できます。
…通行地役権なら行使ないのは分かるけど、眺望地役権の行使がないのはどう判断するの?
うーん、諦めたら?ほら消滅時効なんてもんは法律が残してくれたオマケみたいなもんだからさ。
逆に取得時効もあります。以下条文
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
ここで言う継続的に行使とは、要役地の地権者が承役地に通路を作った等、便益のために自分で用意したものを指します。
こういったものじゃないと時効取得はできません(判例)
なんで建物低く建ててもらった等の眺望地役権は、時効取得は出来ないでしょう。
要役地がA・Bの共有物だったらどうでしょう?Aの時効成立で便益のため自分で利用されたものは、Bも取得できるのでしょうか?
できます。
逆に時効を更新させるためにAに対して裁判上で請求しました。Bにはしませんでした。時効は更新されるのでしょうか?
できません。
地役権は土地にくっついてくる権利です。共有者一人は全員の物であり、請求も承諾も全員に対して行って効力があります。
さらに地役権の承役地の所有者は、地役権行使のための工作物設置や修繕を行う義務があります。藪になってたら刈り取らなきゃ、みたいな。
一応対価とってもいいんだから、維持はあんたらがせいよ、ってことです。
この場合の工作物は相手側が用意していなので時効取得にはかかりませんが、
それでも義務が多いことには変わりません。なので規定された条文が以下。
承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。
合意で登記抹消もいいけれど、
面倒はゴメンだぜ、って場合はあげちゃう、というより押し付けちゃうことがいつでも可能です。
囲繞地通行権
地役権に似ていますが、決定的な違いは登記しないことです。
要は完全に回りを家ないし他人の土地に囲まれた土地の所有者は、
無理にでも公道に出られる権利がないとどうしようもないだろ、のために規定されました。
以下条文
1、 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2、 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
1、 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2、 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
どこでも通行できる訳じゃありません。損害が少ない、ちゅーか迷惑がかからない道を通って公道に出なければなりません。
囲繞地側の人間は、場合によっては通路を作ることも許されます。
しかし、
第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。
ロハはダメよ、とも規定されています。
このように結構なリスクを抱えるのが囲繞地の不動産です。
公道に接地してないので再建築不可、なーんて不動産屋でも表示されていたり、
割安で買える可能性はありますが、素人は手を出さないほうがよろしいでしょう。
なんせ囲繞地だけに異常なのです。
なんちゃって。以上で用益権は終了です、なんちゃって。
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