抵当権が言葉だけで恐るるに足らずならば、
保証人制度は恐れ慄き頭隠して尻も隠す制度です。何なら全身に般若心経を写経しましょう。
念彼観音力~、ほら観音様が守ってくださいます。はーベントラ~ベントラ~。
こんな感じで様々な神通力を借りてでも阻止すべきが「保証人」制度です。
…とは言っても「保証人」制度は実務上あまり使われていません。
真に警戒すべきは連帯保証人であり、これでキミも悪魔と契約するのです。
「コトワリ(断り)無く保証人の力を解放したとて、何の救いがあろうか…」
ヨタはこれぐらいにして、条文を見てみましょう。
1、保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2、保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3、保証契約がその内容を記録した電磁的記録
(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
3項は2項の補助のようなもんですね。というわけで1項をみてみますと、
主たる債務者が履行しない時に代わりに履行する責任がある。と規定しています。
過去の学習からピンをきた方はいらっしゃいませんか?
債務が履行されなかったとき、どういうことが起こったでしょうか。
動産の差押え?それもありえますが、民事保全法はまだ後の学習になります。
もし抵当権が設定されていたならば、抵当権が実行されるはずです。
抵当権は債務に対して物を差し出す制度です。
保証人の制度とは債務に対する人質の制度です。言葉は悪くとも人を代わりに立てています。
で抵当権を例に出した訳ですが、覚えているでしょうか、抵当権の性質です。
まず抵当権には付従性がありました。債務が消えたら抵当権は消滅します。
保証人も同じく、主たる債務が消えたなら保証債務も消滅します。
例を出しましょう。AがBに100万円借りました。CはAの保証人になりました。
当然AがBに全額弁済すれば、Cの保証債務は消滅します。
弁済以外の事由では?例えばAがBに100万借り、CがAの保証人になりました。
しかしA,B間の金銭契約が、Dによる強迫で結ばれたとしたらどうでしょう。
Aは契約を取り消しました。すると主債務が消えたので、Cの保証債務も消えることになります。
保証債務にも付従性があるのです。
一緒に覚えた抵当権の特性も覚えているでしょうか。
AさんがBさんに100万借りました。CさんがAの保証人となりました。
Bさんが100万の債権をDさんに譲渡しました。
当然Aさんの債務は生きていますが。Cさんの保証債務はどうでしょう?
実はこれも生きています。Cさんは新たにDさんと保証契約を結ぶ必要はありません。
抵当権における随伴性は、保証債務でも存在します。
保証債務で負う責任
じゃあ保証人が保証債務を負うべきなのはどこまでなのか。それも条文で規定されています。
保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
主たる債務、上記の例ならばAさんが100万中20万弁済したとします。
保証人Cさんの保証債務は、100万でなく80万になります。
とは言っても、保証債務は最初に契約された主たる保証債務より上回ることがあります。
それが447条。
1、保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2、保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
利息、違約金、損害賠償も保証債務に含まれるので、
結果Cさんが100万より多く保証しなければならない可能性は十分にあります。
じゃあ更にAさんが20万、Bさんからおかわり借金したとしたら、Cさんの保証債務はどうなるの?
最初に紹介した条文446条に戻りましょう。
2、保証契約は書面でしなければ効力を生じない。
借金のおかわりはあくまで別の契約です。その保証人になるかはCさんの判断次第。
当然口約束ではだめ、Cさんの知らない間に保証人になるのもダメ、書面が必要となります。
抗弁権
そんな感じでどんどんいきましょう。次は保証人が債権者に主張できることをまとめます。
引き続き主たる債務者Aさん、債権者Bさん、保証人Cさんとしましょう。
もし債務者Aさんが債権者Bさんに対して債権を持っていた場合。
CさんはBさんに、その債権をもって保証債務を相殺しろ、と主張できます。
債権者Bさんが保証人Cさんにカネを払えと請求した場合、
まずは主債務者のAさんに請求してくれ、と支払いを拒むことが出来ます。
債権者Bさんが保証人Cさんに払えと請求した場合、
Cさんが債務者Aさんが実は弁済出来る程度の財産を持ち、かつ強制執行が容易と証明できれば、
BさんはまずAさんに強制執行しなければいけません。結果Cさんは支払いを拒むことが出来ます。
最後、保証人制度のちょっとした例外です。
行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。
分かりづらいので補足しますと、
制限行為能力者のした借金を、制限行為能力ゆえ取り消せると知った上で保証人になったら、
制限行為能力者が払えなくなった場合に、保証人が新たな主たる債務者になるよ、という規定です。
という訳で保証人終わり!!
正直な話、どんどんいきましょうより下は試験対策です。
もしこのブログを暇つぶしに読んでいただいている方には申し訳ないのですが、
実務では知っておいても役に立たないです。
なぜか。ほとんどの場合に使われる制度は「保証人」ではなく「連帯保証人」だから。
次は保証人制度と比較しながら、連帯保証人を考えていきましょう。
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