民法 連帯債務

学習

さて連帯債務です。言い方を変えれば連帯保証人になることです。
一言、なっちゃだめです。




先に令和2年4月1日から始まった新民法における、連帯保証人制度の変更点を上げておきましょう。

この改正は、債務者と合同で破産者となってしまうような悲劇を少しでも減らそうとした改正です。

今借金が無い方にも是非伝えたい。身近な人が隠れ借金してるケースなんざいくらでも転がってます。

「借金の保証人になってくれないか…」(実際は連帯保証人です!勘違いしなように!)
なので民法に興味が無い方も、ひとまず知っておくべき改正と思います。


特に重要と思われるものを抜粋します。


1、根保証契約について 
(根保証契約とは、不特定の債務を保証する契約です。)

保証人の責任を負う金額の上限を決めなければ
、保証契約は無効となる



これ、特に不動産賃貸契約で現在連帯保証人を組んでいる場合は、連帯保証契約を新たに結ばなければいけないようです。他のケースの場合はもう少し調べてみます。

2、根保証契約の続き 

保証人の破産、死亡、ないし主債務者の死亡後に発生した債務は
連帯保証の対象外となる。



→元本(借金の額)が確定します。言い換えれば、不特定の債務が特定されます。 

たとえば主債務者が賃貸物件を借りたまま亡くなった場合、
連帯保証人はその後の家賃を支払う必要はなくなりました。

3、主債務者の財産状況を、連帯保証人に提供することが義務となった



そもそもの資力がない人間が、口八丁で保証人を取り付けることが無理になった訳です。

4、個人が事業用の連帯保証人になる場合、公証人による意思の確認が必要になった。



…いやまぁ手続きをめんどくさくしただけと言えますが、
めんどくさいおかげで考え直す時間が増えるかもしれません。

特に「個人が事業用の連帯保証人になる」、ってのは古今東西物語のネタになった訳ですし。

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連帯債務の内容

では連帯債務、連帯保証の本質に移りましょう。

…その本質とはっ! 保証人も主たる債務者と実質同等になる、ということです。

実際に金銭等のメリットを得たのは、主たる債務者のみであるにも関わらず、
債務を抱えるというデメリットのみを抱えるのが、連帯保証人制度の本質なのです。


条文を見てみましょう。

第432条 履行の請求

数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、
又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。



主たる債務者が払えないのであれば、連帯債務者(保証人)に請求出来ると規定しています。

この条文、裏を返せば保証人制度にはあった、催告の抗弁権を否定しているのです。

すなわち「まずは借りた本人に請求しろ」とは、連帯保証の場合は言えなくなります。



同時に検索の抗弁権もありません。 

条文通りですね、「あいつはカネがあるんだから強制執行しろ」と主張しても、
432条を盾に、「いやアナタにも弁済を請求できるししますよ」と債権者に主張されて終わりです。

現実は保証人制度はほぼ使われることがなく、この連帯保証制度が当たり前になっています。
なんで催告・検索の抗弁権など絵に描いた餅に過ぎません。


これが4月1日の民法改正でどう変わるのか、良い方に変わればいいのですが、
世間様は民法改正ナニソレ?てな具合に混乱しています。

事業資金に行き詰まりつつある今こそ、連帯保証人制度が改正され少しでも債務者に有利になった
それを踏まえて学んで冷静になって、融資の交渉に臨んでもらいたいと切に願います。



なんでこの項は真剣なのか。実はワタクシ自身も親父殿の連帯保証人になりまして、
さらに言えば母も祖母も連帯保証人になった経緯がありまして、
さらにさらに主たる債務者であったはずの親父殿がとっとと亡くなりまして、


それでも先祖代々の家や土地を手放せないと家族会議で決まったから相続放棄も出来なく、
ボクが勝手に税理士経由で任意売却の手続きをこっそり進めた過去があるからです。


任売が思ったように進まなかったら連帯保証人全員で自己破産するところでしたマジで。

そこからどうやって復活したか?いやボクって不死身だからさ~。

試験対策

さて以下はいかにも試験対策な、箇条書きで進めていきます。

何かといいますと絶対効宅建試験を受けるなら絶対覚えておけ、なルールになります。

1、履行 一人が債務を履行すれば、連帯債務者の債務は消滅します。

2、請求 一人に請求すれば、他の債務者に請求したことになります。

補足、請求するとどうなりましたっけ?そうです、時効が中断します。


3、更改 一人の債務者が新しい債務を立て、前の債務を消滅させれば、連帯した債務も消滅します。

補足、実際問題として、新しい債務にも連帯保証人は付くよね。あくまで建前のルール。


4、混同 相続などで債権者と債務者の一人が同一となれば、連帯した債務も消滅します。

補足、抵当権などもそうですが、カネを借りる話になると対銀行をイメージしがちです。

個人間の債権債務に対しても連帯保証は有効であることに注意しましょう。だから混同もありえるよ。


5、相殺 他の債務者の債権で相殺すれば、連帯した債務も消滅する

補足、他の債務者が債権を持っているのに相殺しない場合は、債権を持っている債務者の負担分だけ、

債務の履行を拒否できる。 連帯保証人は地位は同じなので、相殺できるならしろよと内輪もめ、要求できる訳ですね。


他旧民法では、免除・時効がありましたが忘れてください



そもそも絶対効って? 連帯債務者一人に生じた事由が他の債務者に影響を与えるルールです。
んで連帯債務の基本ルールは相対効です。

これは連帯債務者一人に生じた事由はその連帯債務者のみに影響を与える事を指します。

例えば債務の承認(つーか相対効の説明って大概これです。試験対策では絶対覚えるべき箇所)
債務の承認をしたらどうなりましたっけ? そうです時効が中断します。


んがこれは債務の承認をした連帯債務者のみが中断します。請求と間違えないように!


求償権

最後に求償権の説明をしましょう。

民法442条ですが長いので割愛。要は連帯債務者の一人が負担した部分について、

その債務者は他の債務者に「くれ」と言えます。


ただし全額ではありません。
例えば600万をA・B・Cさんの連帯債務として借り入れました。

Aさんが600万を弁済しましたが B・Cさんに「くれ」と言える額は、

600万ではなく、各自で割った負担部分の200万となります。

ちなみに弁済以降に発生した利息、損害賠償も求償できます。



さて旧民法であった免除・時効についてですが、まずは新条文を見てみましょう。

第445条 (4月1日から施行)
連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。



同様の例えで、A・B・Cさんが600万を連帯債務として借り入れました。

Aさんが雨に濡れて震える子犬を助けたところを銀行の頭取が目撃し、
感動した頭取がAさんの債務を免除したとしましょう。

後にB・Cさんが300万ずつ出し合って弁済したとするならば、B・CさんはAさんに100万ずつの求償権を得るわけです。 Aさんに大した得はありませんでした。

時効も同じ。例えばB・Cさんだけ債務の承認をしてしまい、Aさんの債務は時効を迎えました。

後は免除と一緒です。B・Cさんは弁済後にAさんに求償できます。



ここからは余談です。旧民法では免除と時効は絶対効でした。
第445条旧民法
 連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。

ワタクシの経験で例えます。祖母は高齢のために日向でボンヤリすることが多くなりました。
そんな祖母を見て銀行は連帯債務を免除しました。

ワタクシが物心つく頃には嫁をイビりぬいたくせに、晩年はそのことも忘却し、実際の負担も無くなりました。

免除の分は他の連帯債務者が負担すると規定しているので、ボクらの暮らしは一向に楽になりません。

今でしたら払えやバ   

それでは今回はこの辺で。

コメント

  1. […] […]

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