白状します。民法の過去問を解いている中で、一番点数が取れない分野でした。
そんな民法学習初心者、ちゅうか独学者が詰まるのがこの占有権と思われます。
何故かを考えますと、聞ける人間がいない、間違いを正せる人間がいないからであり、
根本が分かっていないから。
今までの学習を思い出しましょう。占有物の「引き渡し」で、占有権が譲渡されました。
動産の支配的な権利を得る要件は「引き渡し」でした。
以上から「とにかく現物持ってるヤツが強いんだろ?」という結論が導かれたのですし、それは強ち間違いではありません。
ただし、私の書いた上4行目を見直してみましょう。
合っているのは「引き渡し」だけです。
支配的な権利すなわち「所有権」と「占有権」が違うものだとしたら?
引き渡しがあったので占有権を取得しました、なので「第三者に所有権を主張」できます。
とは全くの誤解です。そんな因果関係は成立しません。
例の如くポテチで説明しましょう。
Aちゃんがポテチを買いました。
B君に半分あげる、と言って渡しました。
言外に、AちゃんはBくんに、半分食べたら返してね。と言っています。
この場合のポテチの所有権者はAちゃんですね。
でもBくんに引き渡されています。じゃあBくんがポテチの所有権者でしょうか?
そんな訳ないよね。ポテチをB君に半分あげられる通り、ポテチの排他的支配権者はAちゃんです。
残り半分を自分で食べようが捨てようがAちゃんの自由です。倫理的な問題は置いといて。
同じことをBくんがやったら?Aちゃんに泣かれるか絶交されるか、
いや民法的に考えるならば、弁済するか損害賠償を支払う事になるでしょう。
でもBくんは半分食べる間とはいえ、ポテチを引き渡されています。
ここに占有権が発生します。
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
くどいことダラダラ書きましたがまとめましょう。
所有権など本権と呼ばれるものは、占有を正当化する権利であり、
占有権とは、所持している事で発生する権利を指すのです。
占有権者は具体的に何が出来る?
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
例えばBくんが占有しているポテチを、Cくんが盗み食いしました。
当然Bくんは怒りましたが、Cくんは屁理屈をこねました。
「これAちゃんのポテチだから、Bくんに怒られる筋合いはないよ」
ここで怒る筋合いを認めたのが占有権です。
「いーや、今はボクが持っているんだから盗み食いはダメ」
と主張できるんですね。
これが占有権の中身となります。
さらに別の例を出しましょう。
占有権は所持している事で発生します。 経過は問いません。
なので盗っ人にも占有権は認められます。これだけだと変な話なんですが、
占有権の行使具体例にあてはめますと、
盗っ人が宝石を盗みました、更にその宝石を盗もうとしている泥棒がいます。
「宝石を盗むな」と盗っ人が主張できます。
しかも188条の条文で、その主張は「適法の推定」とお墨付きをもらっています。
悪意の占有者 善意の占有者
Bくんも盗っ人も、程度の違いはあれど悪意の占有者という立場は変わりません。
悪意の占有者とはどういうことか?本権を持っている人間を知っていることです。
Bくんの場合はAちゃんに所有権があることを当然知っています。
1、 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
果実とは、その物から出る利益を指します。
実際に成る果実もそうですし、物の使用の対価で生まれる収益も果実と呼びます。
Bくんのポテチに例えるのは非常に難しいので、ここはコアラのマーチにしましょう。
Bくんが半分食べるために占有しているコアラのマーチに、
もし眉毛付きコアラが潜んでいたら?
190条に当てはめれば、Bくんが食べても捨てても、
Aちゃんへ眉毛付きコアラ返還義務があるのです。
ではもしBくんが善意、Aちゃんが買ってきたものと知らず、
Bくんの母親が自分のために買ってきたものと誤信して眉毛付きコアラを食べてしまったら?
1、 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
条文の通り、眉毛付きコアラの返還義務はありません。
お母さんへ返還義務あるんじゃね?なんて野暮なツッコミはしないように。
2、 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
189条には続きがあります。敗訴したら敗訴した時から悪意の占有者になるのではありません。
訴えの提起のときから悪意とみなされます。
これは判例で示されています。要は占有者は簡単に悪意になっちゃうんですね。
もしかしたらAちゃんのものかも…と思いながら食うコアラのマーチは果たして美味いのか?
そもそも眉毛付きコアラは果実なのか?
そんな謎は引き継ぎませんが、占有権は次回へ続きます。
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