今回はちょーっとあんまり聞き慣れない言葉、即時取得をテーマに送ります。
んで気を付けてほしいのが、動産の物権変動の続きです。
不動産の物権変動は、例の民法177条です。
これは何度も繰り返しますが不動産は登記ですよね。
所有者がはっきりした物の取引は、所有者を保護しますよ、ということであり、
権利を公示しているはずなのに、取引相手を間違えた等は、その取引相手に過失がある、ということでもあります。
そんな奴は保護しなくていいよ、厳しいかもしれませんがそれが法と言う名の掟なのですねー。
では、動産の物権変動に戻ります。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
例を出しましょう。
AさんがBさんにポテチを預けました。
BさんはAさんに無断で、Cさんにポテチを売りました。
Cさんは実はAさん所有について善意無過失、であれば、
(Aさんに善意なのに隠匿しながらポテチ入手するとも思えませんから)
Cさんがポテチの所有権を即時取得した と言えます。
もちろんAさんBさんの間柄とBさんCさんの行った取引は無関係です。
AさんはCさんに所有権を対抗できません。
AさんはBさんに無権代理行為として損害賠償は求められるでしょうね。
実際はポテチの弁償ぐらいでしょうが。
これは即時取得の一番わかり易い例です。
本来のビジネスであればもう少しこんがらがった条件のうえで、
これは即時取得かそうでないかが判断されることになります。
なので、ここで即時取得の要件を4つ挙げましょう。
繰り返しになりますね。所有者がはっきりしていない物が即時取得できます。
動産である→不動産ではダメなので、不動産に定着した立木も即時取得対象ではありません。
また登録制度のある自動車も、即時取得の対象にはなりません。
実際に所持しているけれど、所有者ではない人を指します。
相手方が未成年者であったら、要素の錯誤があったりしたら、取引は取り消しの対象になります。
また、贈与や競売の落札は取引ですが、相続は取引ではありません。
実は民法30で学んだ占有改定では即時取得できません。
占有改定はあくまで占有の移転であります。
他も占有の移転なのに、
じゃあなぜ占有改定では即時取得できないのか?
前回の例を引き合いに出します。
ポテチをA買い主B売り主で取引しました。
Aは後で持って帰るから置いといて、とBに頼み、Bは了承しました
占有改定したので占有移転は成立します。
しかしこの後第三者買い主Cが来て、Aより高く買うからとBに頼みました。
Bが承諾したら、AとCが対抗関係になってしまいます。
どちらかが即時取得してしまうことになると、取引の安全を図れなくなるために、こういった規定が置かれました。
じゃななんで指図による占有移転は即時取得の対象になるの?
対象物、これから占有しようとしている物がどこにあるかが問題です。
指図による占有移転は、占有物は売り主の手元でなく問屋の元にありました。
この場合は取引の安全が図れる、としたのであります(判例より)
盗品・遺失物の即時取得
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
193条から見ていきましょう。
2年間は所有権を回復できます。条文どおり無償で回復請求できます。
ただし規定されているのは盗品か遺失物です。
元の所有者が詐欺・強迫によって所有物を失った場合の規定ではありません。
取引の取り消しを請求できるのであって、無償で返ってくるわけではありませんし、
取引上の詐欺・強迫は一般的にされた側が立証しなくてはならないこと、
これはお前のものは俺のもの理論で説明したとおりです。
で194条はそれを善意無過失の第三者が手に入れた場合です。
代価を支払わなければならない、の規定を見れば分かる通り、
取引の安全、善意無過失の第三者を保護した規定です。
被害者より第三者を保護することが利益衡量、かと言われるとちょっとボクの胸の内がムズムズしてきますが、
ま、金払ったのにそれ俺のモンだったから返せ、の逆の立場の方が胸の内がオギオギしてきますので、そういうもんなんでしょう。
ちなみに第三者が贈与によって取得した場合は、元の所有者は無償で回復することができます。
学習ついでのおばあちゃんの知恵条文を紹介。
第195条 動物の占有による権利の取得
家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
首輪している犬猫は是非保護しましょう。アナタが新たな飼い主です。
って簡単な話じゃないんですぜこれ。何故か。
「家畜以外の」範囲があいまいだから。
昭和7年2月16日 大審院の判例がありました。以下抜粋
だから犬猫等はもし保護しても、家畜以外の動物だから正式な所有権者がいるよ、
だから犬猫等について権利を行使する権限はアナタにないよ。
これこそボクの胸の内がムカムカする利益衡量ですね
そんなこんなで次回もよろしく。
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