民法 動産の物権変動 占有の移転

学習
178条 動産に関する物権の譲渡の対抗要件

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。



読むだけだと何てことはない条文なのですが、
日常生活に関わってくる民法で、これ以上の条文はそうそうありません。
なので言葉一つ一つを挙げて、細かく分析していきましょう。


まず動産です。動産とは何か?
不動産以外の物です。 過去に出した民法86条の規定ですね。

次 物権の譲渡とは?物権は今は所有権のみを考えましょう。
では譲渡とは?
権利、財産等を移転させることです。


譲渡と聞くと無料を想像しがちですが、
贈与、売買、交換等、有償無償を問いません。 「契約」が大きく関わってくる所ですね。

では第三者とは?
ここで言う第三者は、いわゆる当事者以外のすべての人を指す、訳ではありません。
不動産の物権変動と同じく、正当な利益を主張できる人間が第三者です。

では対抗とは?
主張できることです。


以上から民法178条を、もうちょっと日常生活に近い文章で表してみましょう。
契約によって手に入れた物は、引き渡しがないと、利害関係者に所有を主張できない


ま、今更ではありますね。お前のものは俺のもの理論で説明しましたが、
もしのび太くん言われるがままに引き渡してしまったら、
ドラえもんにものび太のママにも、「あれはボクの物だ」と主張できなくなりますし、

ジャイアンから強迫をされた、ないしジャイアンが不法行為者であることを立証するのは、
のび太くんの責任になります。

そもそもなんで「あれはボクの物」と主張できないのか。
不動産なら「登記」という制度がありました。所有権を公示できるのです。

が、動産は登記できません。
ポテチやジュースの一個一本を登記簿に載せて公示して、なんてやってられませんね。
せいぜいその物に記名するのが関の山です。

動産でも違う形で所有権を主張出来るものがあります。
登録された免許証やクレジットカードは、登記はされていませんが所有者を照会できますし、
指紋認証のスマートフォンならば、認証に成功すれば所有者と主張できる大きな材料になるでしょう。

が、それらは動産の中ではあくまで少数派です。引き渡しが無いと第三者に所有権を主張できない、これが原則です。

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占有の移転

そもそも引き渡しって何?単に渡すだけの話じゃないの?

と思っていると実は民法の条文で規定されています。見ていきましょう。

第182条 現実の引渡し及び簡易の引渡し 

1、 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
2、 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。



あゴメン占有権はちょっと別の話だわ、今は民法における引き渡しの定義に注目をお願いします。


まず1項。これが現実の引渡しですね。ポテチ買ったよ売ったよはいどうぞ、を難しく言っただけです。

次に2項。こちらは簡易の引き渡しとなります。このポテチ食べていい?はいどうぞ。を難しく言っただけです。
ちょっと変化して、このポテチ200円払うから食べていい?はいどうぞ。も成立します。

第183条 占有改定
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。



消耗品のポテチだと分かりづらい条文ですので、今度はダンボールで買ったポテチにしましょう。

といいつつボクはドンタコスが好き。

買い主:そのポテチ1ロット買ったけど、今日歩いて来たからまだ置いといて。
売り主:は~い

現物を所持しているのは売り主ですが、買い主に引き渡したとみなされる、これが占有改定です。
売り主は買い主の代わりに占有しているので、代理人という表現が使われています。
顕名だ代理権だ、の話は別なので過去の記事を見てね。


第184条 指図による占有移転
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。



ますます分かりづらいので、いつものポテチに登場してもらいましょう。

買い主:ポテチ10ロット買いたいよ
売り主:今在庫ないから問屋に問い合わせるね
問屋:10ロットっすネ、在庫確認しました~。
買い主:んじゃとっといてヨロシク。


条文が分かりづらいのは、本人と代理人と第三者が何を指すのかが分かりづらいからです。
最終的に本人ではなく第三者が取得する、と規定する条文なので、そこを起点に考えると分かりやすいと思います。



「引き渡し」こと「占有の移転」にはちょっとした変化球も入りましたが、
以上が揃って民法178条、譲渡(契約)による動産の所有権が主張できます。

譲渡以外での動産の権利取得、それが次のテーマとなります。

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