民法 物権 登記請求権

学習

前回の例では、隣の土地を駐車場にしたいおじさんが出てきました。
所有者がわかれば、交渉して取引して所有権を得られる、のが流れです。


登記とは公示すること。権利を第三者に主張できること。それが結論でした。


もうちょっと細かく規定したものがありますので、条文を見ていきましょう。

不動産登記法
1条 目的 
不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度

~中略~ 取引の安全と円滑に資することを目的とする。



民法から外れまして不動産登記法の世界になりました。
が、前回出したと言った結論が不動産登記の目的であることが、明確に表示されていること分かっていただけましたでしょうか。

不動産登記法
2条 定義 
1項 不動産 土地又は建物を言う



ん?民法じゃ不動産あっての動産なのに、不動産登記法では土地と建物であると定義されちゃいましたよ?
というのもこれは不動産登記法だからです。不動産登記法における不動産とは、土地又は建物を指します。

併せて考えましょう。土地及び建物を表示・権利を公示して取引を安全に行うこと。
しつこくなりますが、これが不動産登記の目的です。

ちょっと脱線しますが、職場や友人にそれとなく聞いた所、登記とは何かわからない方が結構いらっしゃいます。

いやワタクシがデリカシーに欠ける人間だとしても「お前さー、登記って知ってる?」なんて話のフリはしませんよ?


普通に生活していると、登記に関る時って相続かマイホーム買うかぐらいなんですね。

しかも相続で関わる時は、自分が相続する主体者じゃないと積極的には関わらないし、

マイホームを買う時は、銀行や不動産屋の言い分(要はカネの問題)の方が大きいので、登記事項に関しては向こうの説明をハイハイ聞いたままで進むことも多いですし。

本来ならば賃借権という、住居を借りる際も、テナントとしてビルの一室を借りる際も、占有を正当に主張できる権利はあるのですが、

こちらの登記は義務じゃありませんし、そもそも借地借家法で借り主の権利が守られるので、「賃借権登記する?」なんて勧める物件オーナーはいないと思います。

そもそも司法書士に委任するもしくは法務局に行く手間がありますし、
なにより費用です。登録免許税が不動産課税評価額の0.5%にプラス、司法書士への報酬があります。
0.5%なんてあなどっちゃいけませんよ?1000万の不動産に賃借権を設定すると、
税金が5万かかります。イヤでしょ?わざわざ賃借権設定しないでしょ?

不動産登記法
3条 登記することが出来る権利等 
次に掲げる権利の保存等についてする
1、所有権~中略~7、抵当権 8、賃借権 ~後略



こういったものが公示されます。ここも条文の合せ技で理解しましょう。
不動産の占有を正当に主張できる相手方と、取引を安全かつ円滑に行うために公示されるのです。


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申請主義

問題は次の条文です。

不動産登記法
16条 登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁もしくは公署の嘱託がなければ、することができない。



登記とは原則申請主義です。
一部登記は官庁の嘱託、とありますが、たとえば税金を滞納したら、公僕が差し押さえの登記嘱託書類を法務局へ持っていく、というようなケースです。

取引の安全のためであり、権利を主張できる根拠であるのだけれど、自分でやれというスタンスなんですね。

だから表題、登記請求権というものが存在します。

不動産を買った場合を見て登記手順を考えましょう。
買い主がいます。売り主がいます。合意して不動産取引が成立しました。

買い主は登記権利者になります。売り主は登記義務者になります。
双方の協力がないと所有権移転の登記手続きはできません。

登記権利者は登記義務者に登記の協力を請求できる。これが登記請求権です。
ここで登記義務者が協力を拒んだら? 登記権利者は申請を単独で申し立てられます。

申し立てる先は裁判所です。登記請求権が認められれば。登記義務者の協力を得ることなく、判決により登記がなされます。
晴れて買い主は所有権者と公示され、所有権を公然と主張できるようになりました。


登記請求権は特に条文に規定されてなく、
判例によって様々な登記請求権を認めています。3類形がありますのでそれぞれ見ていきましょう。

1、物件的登記請求権
買い主Aさんと売り主Bさんがいたとします。Aさんが取引によって不動産を所有しましたが、登記簿上は所有者Bさんになっていました。
Aさんは所有権の移転登記をBさんに請求できます。拒否されたら裁判所に申し立てできます。
登記請求権で一番分かり易いパターンですね。上で説明した例がそれです。

ちょっと変化して、所有者がC→B→Aさんと移り、登記はC名義だった場合は?
AさんはCさんに所有権移転請求ができます。

2、物権変動的登記請求権
上記例、C→B→Aと所有者が移りました。AさんはCさんに所有権移転請求をして認められました。
しかし登記簿上は、CさんからAさんへ所有者が移ったと公示されます。

登記簿上の物権変動は出来得る限り正確に記録する事が必要です。


脱線

これは超余談ですが、うちのジジぃお祖父様ってばだれに唆されたのか、
相続税が安くなるという話を聞いて自己所有の土地を細分化し遺言しました。

数字はうろ覚えですが、たしか15623分の4243は妻に 15623分の3985は次男に、
といった具合です。

結果何が起こったか。合計しても15623じゃなくなっちゃいました
昔の登記は手書きだったからこういうことが起こったんですねぇ。

苦労するのは相続した人間です。つまり俺。
ジジィの無茶が悪いとは言え、役所が間違えたんだから役所がどうにかすべきと思いますが、
役所は私達は間違っていない、いずれ全部相続したら所有者1分の1等で書き換えてくれの一点張りです。

俺に登記請求権てあるのかな?請求する相手は役所かもう亡くなってる人間相手だが。
そもそも登記請求権は名義に対してで、数字に対しては多分無理。

おかげでどうなったか。その不動産は簡単に見られなくなりました。
法務局へ直に出向いて、昔の手書きで残されている登記簿をコピーしてもらうしかありません。
公示制度って何なんだろうね。



元に戻ります。登記簿上の物権変動は出来得る限り正確に記録する必要性とは、
取引の安全上ですね。例えば不動産に瑕疵があった場合、もしかしたら登記簿に載っていない所有者が故意に行った瑕疵かもしれません。

なので、Bさん実際には所有権を失っていても、Cさんへ物権変動的に登記請求権を持ちます。
所有権がC→Aだったのが、C→B→Aに修正されるのですね。

3、債権的登記請求権
当事者間の債権の合意があった場合に認めらます。例えば売買契約時に所有権移転請求します、と契約すれば当然認められます。

他、賃借権も、貸主と借り主の合意があれば登記できますし、合意があったと証明できるのであれば、登記請求権が発生します。

あれ、こんなに長くなる予定じゃなかったんだが
物件と登記の話はもうちょっとだけ続くんじゃ

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