1,抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
さあやってきました抵当権。言葉の響きを聞くだけでヤバそうなマズそうな匂いがプンプンします。
抵当とは不吉なもの。
抵当設定されている=借金がある。しかも莫大。
抵当設定=いずれ借金のカタにとられるもの etc…
抵当権ないし抵当という言葉には決して良いイメージはありません。
特に実際に抵当権に接したことのない方との雑談中、「家が抵当に入ってる」なんて言おうものなら、
同情と憐れみの視線を送られた上、「あぁ…」なんて会話が中断したり。
抵当権の誤解
いやちょっと待て。
その勘違い、確かに当たっている部分もあるんですが、
大半は言葉に染み付いたイメージからくる勘違いです。
そもそも今日びの住宅ローンが1%などという低金利で借りられるのは抵当権のおかげです。
新築で家を買ったら、ほぼ間違いなくその家と土地に抵当権が設定されるはずです。
ちょっと話を脱線させましょう。
仮に住宅を買いました。そのために銀行から3000万円を、30年ローン金利1%で借りとします。
住宅ローンは大抵元利均等返済です。意味は毎月の支払いが同じ額、ぐらいを押さえていただければ。
ボーナスや繰り上げ返済等まとまった返済をしないと考えて、
30年の返済額は約34,736,000円です。
借りた側からすれば、金利1%でも473万6千円も多く払っているようでなんだかとっても損した感じ、
なんですが、貸した銀行側から考えてみましょう。
30年間で473万6千円の利益。1年で約15万8千円の利益です。
行員一人あたりの月給にもならないでしょうな。そりゃ銀行はリストラ進めるワケです。
話は戻って、これだけ低金利で貸せるということは、
もしローンが返せなくなった時、いわゆる前の項目で書いた債務不履行というやつです。
今回でいうところの金銭債務が不履行になった時、
債権者は担保をとっておけば、担保を売却して金銭を取り返せます。
要は金を取りっぱぐれるリスクが軽くなる為に、金利を低くして貸し出せるのです。
何もしなければ債権者は平等
実は債権者平等の原則という取り決めがあります。
例えばAさんは100万円持っています。が、Bさんから100万円、Cさんから300万円借りていました。
Aさんはトンズラしてしまい、100万円だけ残りました。
この場合Aさんの債権者であるBさんCさんは、Aさんが残した100万円の割合ぶんだけ回収できます。
BさんはAさんの借金400万分の100万、すなわち4分の1にあたる25万円が戻ってきます。
CさんはAさんの借金400万分の300万、すなわち4分の3にあたる75万円が戻ってきます。
BさんCさんどちらも大損です。でも割合で見ると同じ割合で損しています。
これが債権者平等の原則。
しかしもしAさんの財産100万円が土地代だとして、
その土地にBさんが担保を設定していたらどうでしょう。
土地はBさんのものになり、Cさんに残るものは何もありません。
後は条文の通りです。担保を設定した債権者が優先的に弁済を受けられる。
担保に設定できるのは不動産。(一部動産その他権利にも可能)
不動産を担保にし、優先的に弁済を受けられる権利、これを抵当権といいます。
覚えていますか?不動産の権利を主張するには1にも2にも登記ということを。
登記が無くても抵当権は成立しますが、第三者に対抗できなくなります。
上記の例ならBさんが登記しなかったら、土地を競売に入れて債権全額の100万を取り戻すためには、
BさんはCさんに対して抵当権が成立したと立証しなくてはなりません。
抵当権も契約
抵当権は約定担保物権です。
わかりづらいですね、約定とは当事者同士の合意です。契約と似たようなもんです。
上記の例だと、銀行が抵当権者、新築の家を買った人が抵当権設定者になります。
お互いが合意して、抵当権は成立します。
余談ですが実際どうなんでしょうねぇ、銀行は抵当権を設定するために説明してくれますし、
契約書を用意して、そこに抵当権を付けるよ、とかなんとか書きます。
一方の家買う側は、家がほしいという想いが先行します。
契約書にハンコ押さなければお金を貸してくれないなら、そりゃハンコ押します。
一生に一度かもしれない、クソ高い買い物のはずなんですが、
お互いが合意、って胸を張って宣言できる抵当権って、そうそうあるんですかねぇ。
実は分かりやすいから、新築の家を購入した際の、銀行と買った当人の例を出したのであって、
別に銀行以外の人間、組織が抵当権の設定のために合意しても構いません。
銀行という組織が必ずしもキチンとしてるとは言いませんが、(スルガ銀行の例もあるしね)
例えば個人間で抵当権設定となると、抵当=不吉なもの の公式もあながち間違ってないような。
というように、抵当権のやりとり相手が銀行だとまだイメージしやすいのですが、
銀行以外を相手に抵当権を結ぶ、というのはイメージしにくいです。
で、相手が銀行じゃない抵当権のケースは宅建士試験に出ました。嫌がらせしたい難易度を上げたいんでしょう。
んで、条文を細かく見てみましょう。
Aさんが100万円の債務があるとします。その100万円の債務を担保するのは、
別にAさんの不動産(財産)に限る必要はありません。
甲さんのもっている不動産で担保設定をしても、抵当権は成立します。
保証人、と考えると分かりやすいですかね。保証人が所有する不動産の担保設定も成立します。
これも宅建士試験で出ました。
このまんまが出た訳じゃないですが、第三者の不動産で債務者の債務を担保する、ってえのが、
理解しにくいから嫌がらせ出題しやすいんでしょう。
もうちょっと条文に踏み込んでみます。
占有を移転しない ここポイントです。
所有権にくっつけるのが抵当権ですが、だからといって所有者が銀行に移る訳ではありません。
更にいうなれば、抵当権設定者が債務不履行になったとしても、所有権が銀行に移るのではないです。
じゃあ抵当権って?
優先的に弁済を受けられる権利であります。
じゃあ抵当権を実行すると?
設定された担保が強制的に売り出されます。 いわゆる競売です。
抵当権は怖いものではありません。むしろ金利を安くお金を借りるため、有効につかいましょう
本当に怖いのは抵当権の実行です。
この違い、勘違いが少しでも無くなれば、民法を勉強している甲斐があるというもんです。
抵当権のお話はまだ続きます
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