お父さん、お父さん、抵当権が見えないの?
落ち着くんだ坊や、抵当権は怖くないよ。
抵当権「素敵な坊やを連れてっちゃうわ」
お父さん、お父さん、抵当権が実行されるよ?
何ぃそいつは大変だ!!
前回のおさらいでした。
では抵当権はいつ実行されるのでしょう。
抵当権者の気まぐれで抵当権を実行されたらたまりません。
抵当権は約定担保物権というお話を前回にしました。
約定すなわち契約であり、お互いの同意があって成立する担保物権です。
契約なので、契約の内容があり、それによります。
だから抵当権者の気まぐれで抵当権を実行できる。の文言が入ってハンコを押したら、
抵当権者の気まぐれで実行できます。 契約書はよく確認しましょう。
多少冗談です。大体は債務が不履行になった時に抵当権は実行されます。
債務が不履行になった、を特定する文言が契約書に書かれているはずです。
例えば、金銭債務の弁済が3回遅れたら債務不履行とみなす。とか何とか。
逆に言えば、弁済期に弁済していたら当然抵当権は実行できませんし、
弁済期が来ていなかったら抵当権は実行できません。
だから計画的な抵当権など恐れるに足りません。
お互いの同意があるならガンガン抵当入れようぜ!!ってなもんです。
抵当権の順位
抵当権は1つの物権に1つしか設定できない、訳ではありません。
2つも3つも抵当権を設定することができます。
これを1番抵当権、2番抵当権、等言います。
違いは何か。と言ったら優先順位です。
例えば甲不動産が3000万円の価値でした。
A銀行が1番抵当権を設定しています。債権は2000万です。
B銀行が2番抵当権を設定しています。債権は2000万です。
抵当権が実行され、甲不動産は3000万円で競売されました。
A銀行は2000万円全部受け取れますが、B銀行は残りの1000万しか受け取れません。
もしCさんが3番抵当権つけていても、彼には何にも返ってきません。
抵当権は約定担保物権(当事者の契約によって生じる担保物権。質権もそうよ。)なので、同意があればいくつでも設定できますが、
その権利は早い者勝ちです。正確には順位が上が勝つみたいな。
抵当権の順位の譲渡も出来ます。順位の放棄もできます。
この辺不動産登記法の勉強中に説明できればいいのですが、例によっていつになるかは不明です。
実際に抵当権が付いていたとして
抵当権が怖くない理由の一つに、占有はそのまま、というお話を前回しました。
銀行に借金して自宅を買っても、自宅は自分のもの(抵当権設定者が使える)というアレです。
占有、と言いましたが、占有だけではなくもうちょっと拡大解釈できます。
抵当不動産を使用できます。賃貸に出せます。売却もできます。
これらは占有と同じく。抵当権者に伝える必要はありません。
所有者が勝手にできます。勝手に売却したときの信頼関係はどうなろうか知ったことではないですが。
賃貸は分かりやすいですが、使用って何?
例えば土地に木を植えて育てて、その木を売却するのも抵当権者に断り入れる必要はありません。
例えばミントを植えてもいいですよ。結果は知ったことではないですが。
以上は勝手に出来るんですが、じゃあ抵当権が実行されたら植えた木はどうなるの?
抵当権設定時にくっついているもの(従物)も、抵当権の対象になります。
例えば土地に抵当権設定し、その土地に庭木が植えてあったら抵当権の範囲です。
建物に抵当権設定したら、付いてたエアコンも掘り炬燵も抵当権の範囲です。
しかし実った果実には抵当権は及びません。
現実に実ったりんご等天然果実はそうですし、
賃料といった、物の使用の対価を法定果実と呼びますが。これにも抵当権は及びません。
めんどくさいですねその1。
それじゃ抵当権設定後にくっつけた従物は?たとえば植木したらそれに抵当権は含まれるの?
これ異論がありまして、学説は及ぶ、判例は及ばない そうです。
めんどくさいですねその2。
占有の他にも抵当権には特徴があります。
抵当権設定者から見た場合、債務のために不動産をカタ(担保)にいれました。
抵当権者から見た場合は、当然債権となりますが、カタがある債権を被担保債権と呼びます。
この被担保債権が無くなったら、抵当権も消滅します。これを抵当権の付従性と呼びます。
そりゃ当たり前だろと思ったみなさん、ちょっと待って。例を出しましょう
今回は被担保債権を債務者の借金としましょう。借金が一番身近ですからね。
借金を弁済しました。抵当権が消えました。これは簡単に理解できると思います。
借金が時効で消滅しました。これも抵当権が消えます。なんたって付従性ですから。
借金が銀行の公序良俗違反で消えました。やっぱり抵当権が消えます。やったねラッキー。
そう、被担保債権が消滅すれば抵当権も消滅する。抵当権は被担保債権に付き従っているのです。
もう一つ、抵当権の随伴性についても解説をいれますと、
もし抵当権設定のある不動産を売却した場合、
所有者が変わったとしても、被担保債権が消えていないなら、不動産に抵当権がくっついてきます。
抵当権付き不動産なんて買うやついるの?という
気がしますが、
民事の世界は契約の世界、お互いの合意があれば公序良俗違反以外は割と何でもありなんです。
契約書は隅々まできちんと目を通しましょうマジで。
あと不動産買うなら謄本(全部事項証明書)も要チェック。
ま、売買ではなく譲渡という可能性もありますな。
抵当権付き不動産を譲渡された人間はどうすればいいでしょう。
被担保債権が消えなければ、いずれ抵当権は実行されます。くっついてきてるからね。
抵当権の実行を阻止
第三者が抵当権付き不動産の抵当権実行を阻止したいならば、いくつか方法があります。
一つ、債務者に代わって弁済すること。
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
そりゃそうだよな、な規定ですね。
抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
とたんに分かりづらくなりました。そもそも383条が何?という話ですが、
383条は手続きの話です。実体の説明文がこれ。
抵当不動産につき、所有権を取得した第三取得者が代価又は自ら定めた任意の金額を提供して、抵当権を消滅させることを請求する制度
債権の額ではありません、代価もしくは自ら定めた任意の金額で請求できるのがポイント。
この物件1億円で買うたんや、1円置くから抵当権消してえな(方言適当)もアリですね。
三つ、自ら競落
抵当権が実行されて、不動産が競売に出されました。
被担保債権の債務者は競売に参加できませんが、今回は第三者ですので競売に参加できます。
こんな所で抵当権の説明は終了します。
今回は試験対策みたいな回でした。
実体として知るべきは、抵当権は怖くないよ。
抵当権の付従性、随伴性なんて、そんなの当たり前だろ、の感覚に言葉を付けたに過ぎません。
まあくまで学習アウトプットブログだから、
これからこんな回が増えていくことが予想されますので、物好きが付き合ってもらえれば嬉しいです。
それではまた次回。レッツゲットナウロマンティ~ック。
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