時効ですよふたたび
今回も前回の続きとして、時効、特に消滅時効を考えていきましょう。
本来であれば権利を行使できる(履行の請求など)のに、時間経っちゃったからもうダメよ。
これが消滅時効です。
そして特に身近に聞くことも多いヨタ話的消滅時効、
すなわち昔の武勇伝的ワル行為は、加害者を知って3年、被害発生から20年が時効でした。
ではヨタ話にすら上らないさらに身近な請求の権利はどうでしょう。
これにも実は時効の制度があります。
実話
例えばの実話ですが、ボクんち近所のオバちゃんが先物取引に失敗して夜逃げしました。
町内会の飲み屋さんにツケで大量に飲んだあげくの逃亡劇だったそうで、
町内会みんなでボヤいていたそうです。
まヨタ話武勇伝も人としてのだらしなさもそいつらの個性なんで好きにすればいいと思いますが、
人様に迷惑かけるのだけはやめろ、って母ちゃんに教わらなかったの!?
なーんて話があったのが10年以上も前になりますか。
じゃあ現在もし街角でバッタリ出会った飲み屋の主人は、夜逃げオバちゃんにツケ請求できるの?
実はできます。
話の流れで消滅時効じゃないんかい? と思ったあなたは人が以下略。
請求するのは勝手であり、相手が時効を知らずに払った場合は有効となります。
で払ってしまった場合は、後から時効の主張はできません。
時効という分かりにくい制度なのですが、民法の考え方はあくまで真面目です。
要は、後から時効に悪意になった債務者の利益なんて、保護する必要はない。 と断じているのです。
逆転させて考えてみましょう。要は消滅時効とは債務者の権利であり、
主張することで初めて効力を生ずるのですね。
では債権者の立場で考えてみましょう。
実はツケを承諾した飲み屋の主人と、先物取引用の金を貸した業者とでは、消滅時効が違いました。
これが民法改正によって統一されたので、旧ルールなんて覚えなくていいです。
そういえばこれ書いてる今日から民法改正ですね。ハッピーニューしびるろ~。
で新民法で規定された、債権等の消滅時効がこちら。
1. 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
なので例えばオバちゃんが来月25日の給料日にはオカネはらうからサと言って、
飲み屋のご主人がしょうがねえなぁとなった場合。
覚えていますか?ほんとうにしつこく言いますが意思表示の合致で契約は成立します。
飲み屋の主人、いけねぇやあのババァから取りっぱぐれた!から5年、
(実際は町内会でグチってたので、権利を行使することが出来るのをもっと前に知ってたでしょうが)
飲み屋の主人、あの月の来月の25日から、10年経過しない日に街角でばったり会った日には、
消滅時効なんて言わせねえ、キッチリ払ってもらおうか!と請求することができますし、
オバちゃんは消滅時効を盾にして、履行の請求を拒めません。(実際はまた逃げると思うよ)
時効はどこから開始?
消滅時効、というか時効では起算点が重要になります。
どこから5年、10年と勘定するか、という話。
今回は某月の翌月の25日が起算点で、それより5年ないし10年で時効成立です。
ではもしオバちゃんが、「次にオカネはいったら払うからさぁ」と言った場合、
要は起算点がいつになるか分からない、これを不確定期限と言いますがその場合は、
実際におばちゃんにカネが入った時が、時効の起算点となります。
更にもしオバちゃんが、「いつか払うからさぁ」と言った場合、
要は当事者が期限を定めなかった場合は、債権が成立したときが時効の起算点となります。
もっと行きましょう。例えばオバちゃんがツケを払わなかったせいで、
飲み屋の主人が仕入れ代金を払えなかったとします。
飲み屋の主人は、ツケ以外にも損害賠償請求権が発生しますね。
債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効は、債権の履行を請求できる時から10年
かつ、新民法で損害賠償を請求出来ると知った時から5年、と規定されました。
もう一ついきましょう、消滅時効を知る上で外せない考え方。
たとえばオバちゃん、ツケを払わないどころかお猪口と徳利をパクっていきました。
飲み屋の主人はいい迷惑ですが、じゃあオバちゃんはパクった物も時効の主張は出来るのでしょうか?
出来ません。それが民法166条2項
債権または所有権以外の財産権って何って話ですが、地上権とか賃借権等の話なのでまたべつの機会。
重要なのが、所有権は消滅時効にかからない。
ま民法そりゃそうだよなの内の1つです。俺のメガネが俺のじゃない!なんて民法は認めません。
んで次回やりますが、所有権は取得時効にはかかりますが、オバちゃんの占有は平穏でないので取得時効は成立しません。
じゃ所有権て?物を排他的に支配する権利です。所有者は物を使用、収益できます。
飲み屋の主人が自分の徳利とお猪口でオカネ儲け出来る、を難しく言っただけです。
じゃオカネは所有権ないの?
これ民法それどうなの?のうちの一つです。実は民法ではなく判例からなんですけどね。
金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべき
金銭の所有権者は、金銭の占有者と一致すると解するべき
これじゃお金は盗み得じゃん!となってしまいますが、このような判例を下した背景には、
金銭に所有権という排他的な使用権を認めてしまうと、
交換、支払いといった金銭の使用目的に支障があるからだそうです。それも分かるけどね、むーん。
という訳で消滅時効はこれぐらい。
占有のお話が出てきましたので、次は取得時効を考えていきましょう。
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