民法 時効 更新と完成猶予

学習

時効ですよスペシャル「時効はお腹いっぱい」

まずは旧民法より変わった点を紹介します。

時効の「中断」が「更新」に代わりました。
時効の「停止」が「完成猶予」に代わりました。

どちらも意味は大して変わっておりません。

で、更新とは、それまで進行してきた時効がストップし、振り出しに戻ることを言います。
完成猶予とは、時効の完成を延期する制度です。

ここで注意点。完成猶予で時効の進行は停止しますが、猶予中に経過した時間は、
完成猶予が終わった時に本来の時効に加算されます


どういうことか。例えば債権の消滅時効が行使できると知って4年半経過しました。
完成猶予事由が発生しました。完成猶予事由が終了するまで6ヶ月かかりました。
消滅時効の成立は、時効の起算点から何年何ヶ月でしょう?5年半?



違います。完成猶予期間は加算されますので、やはり5年経過時点で消滅時効は完成します。



じゃあ完成猶予って?

上記の例で、完成猶予事由が終了するまで1年かかったとしましょう。
本来の時効の成立は5年ですが、時効成立が6ヶ月プラスされますので、
起算点から5年半後に消滅時効が成立します。

そう、時効の進行がストップする訳ではありません。時効成立が伸びる、それが完成猶予です。

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時効の更新事由

それではどうすれば時効が更新(中断)するのか、条文の規定を見てみましょう

第147条 時効の更新事由
時効は、次に掲げる事由によって中断する

1、  請求

2、 差押え、仮差押え又は仮処分

3、 承認



1から見ていきまししょう。請求とは、裁判上で請求することです。
請求書を送りつけたり、内容証明郵便を送りつけたりしても時効の中断事由ではありません。
裁判に判決が確定すれば、時効の更新されます


この辺司法書士の勉強のうち、民事訴訟法にも関わってくる部分ですね。
なんで街金から請求書が来ても、それは民法上の請求とはならず、時効は進行します。

た・だ・し、実際は街金は滞納すると訴状を送りつけてきます。
ここで第一回口頭弁論に答弁書を提出しなかったり、
第一回も第二回も欠席したならば、被告は全面敗訴です。

しかももし消滅時効にかかっていても、それを自ら主張しなければ、裁判所はスルーします。
先々の学習になりますが、街金に借りている方は注意しましょう。
あ、ボクは別に経験者じゃありませんよ?いやいやマジで。



国民年金滞納していて請求書が来ても、時効は進行します。

た・だ・し、こっちは差し押さえするよ、の予告を通知してきます。

そのままほっておいたら条文にある通り、時効は更新(中断)するわ動産(金目のもの)の差し押さえするわ、
街金なんかより国家権力の方が義理も融通も効きません。




ちなみにこちらも民事執行法で学ぶのですが、差し押さえ禁止の財産として、
衣服・寝具・家具・建具・3ヶ分の食料・実印・位牌・10万円などがあります。

サラ金マネーは過去に金利29%なんて暴利の時代があったもんですが、
血も涙もないのは果たして民間か公的機関か、どっちなんでしょうね?

あ、ボクは国家権力の方で経験者になりかけたので年金事務所に相談に行きました。

何にも解決しなかったけどな!!!




というわけで差し押さえも時効の更新となります。

最後の承認って?それは債務者に債務を承認させることです。
方法は一筆もらう方法でも構いません。「借金あることを認めます」これで時効は更新されます。

本当は口頭でもOKですが、それだと言った言わないの後の揉め事になりますね。



債務の承認は他にもありまして、例えば債務が100万ありました。
「今日はこれだけしか払えないでやんす見逃してくんろ」と100円払いました。

これだけでも債務を認めたことになりますので、時効は更新されます。


取得時効の更新も同じです。
取得の承認ってちょーっと分かりづらいですが、
「ここ俺んちだよね」「そうですね」で承認されました。時効は更新します。



さらに取得時効の更新に一つ加わったルールがあります。
10年ないし20年の間に占有を失うこと。占有を失った時点で時効は更新されます。


次に完成猶予を説明したいのですが、ちょっと長いので条文147~151条とだけ書いて、
必要そうな要点だけ書きます。

おさらいしますと、時効の長さは変わりません。時効の終点が変わる制度が完成猶予です。

まず仮差押、仮処分中は完成猶予されます。
強制執行、担保権の実行中は完成猶予されます。

差し押さえ中や競売中に時効が成立したらどうなるの?を防いだ規定ですね。

催告による時効の完成猶予

次に一番身近かもしれない、催告で時効は完成猶予されます

第150条 催告による時効の完成猶予

1、 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2、 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。



催告とは、相手方に行為を請求することです。
ただの請求ハガキでは時効の中断はしませんが、完成は猶予されるのですね。

ここで街金の行うであろう内容証明郵便の催告が効力を発揮します。
例えば口頭の催告、ハガキでの催告も効力はあります。
が、聞いていないしそんなハガキは見ていないと言われれば、見た聞いたを立証する責任は街金にあります。


それが内容証明郵便ならどうでしょう。誰が誰に大していつしたか、が分かる上に、
内容証明郵便の内容は、受け取った人間は知らないとは言えないという特徴があります。

街金は訴訟が面倒であれば、ひとまず催告して時効を伸ばすんですね。
あ、これはボクの経験則じゃないですよ本気と書いてマジと読んで。

最後に上で書いたことの復習です。条文を見ましょう。

第145条 時効の援用

時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない



援用とは?利害関係者等が本人の時効を知っていて、自分が有利になる場合に使える制度です。

たとえばAさんがBさんにある債務が消滅時効にかかっています。CさんはAさんの保証人でした。
CさんはAさんの時効を利用できます、これが援用です。


ただ条文を見れば分かる通り、裁判所が勝手に時効を踏まえて判決を出すことはありえません
消滅時効にかかっている、と主張して初めて、裁判所は時効が成立したかどうかと扱うんですね。
この辺民法知っておくと得する第何回だっけ?のおばあちゃんの知恵であります。


忘れていた本当の最後の最後の時効です。

第146条 時効の利益の放棄

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。



俺は20年後にまだ占有していても、俺のモンだなんて主張する気は無いゼ!
なんかちょっとかっこよさそうに見えますが幻想です。


債務者側から見た場合にかっこよく見えそうですが、

債権者側から見た場合、この条文がもし無かったら、
金銭貸借契約書に「時効の利益を放棄する事に同意する」の一文を入れれば、
債権者は10年20年経過しようが催告等なーんもする必要はありません。

実は債務者側に有利な制度なんですが、これも知っていると知らないでは大違い。
という訳で時効完成前の利益は放棄することはできません。

ただし時効完成後の利益は放棄できます。
俺は20年占有していたけど、俺のモンだなんて主張するきは無いぜ! これはアリです。


そんなこんなで時効の項目はお終いです。
知っている人間が得をするのが法律だ、のモットーがあるとはいえ、
正直な話、人として納得できないし、利益衡量という意味からも納得出来ない制度でした。


モヤモヤは抜けませんが、まぁ時効にかかっちゃうぐらい時間の過ぎた権利というやつは、
どこかで線を引いて整理することこそ公共の利益になるんだ、と思って納得しますさせます。

…ただねぇ、一緒に空き家問題も考えちゃうのよね。あれも主旨としては時効制度じゃないのかな?

コメント

  1. […] […]

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