民法というのものは、ご丁寧に賃貸借に関してまでルールを作ってくれています。
そもそも賃貸借って?私のイメージでは、カネ積んで貸し借りすること、だったのですが民法の規定はもう少しエレガントです。
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた者を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
実はこの条文、民法改正による変化があります。
旧民法では、契約終了で返還する云々の記述が無かったんですねぇ。
返すまでが賃貸借。
家に帰るまでが遠足なんて民法お父ちゃんに念を押されるようになった訳です。
そして民法601条~622条までが、賃貸借とその内容を規定した条文になります。
しかし現実世界の賃貸借って何が思いつくでしょう?
友達同士じゃないですよ。友達どうしで貸して借りて、は相手が余程じゃないと賃料が発生しない(多分)し、借りパクしてもお咎めなしです(多分)。
ぱっと思いつくのが、ビデオ・DVDレンタルとCDレンタルです。
しかし残念ながら、引き渡しを伴うアナログ的ソフトの貸し出しサービスはもう滅ぶ寸前であります。
代わりに流行っているのはサブスクリプションですね。月額払ってサービスを受けられるというアレです。
当然賃貸借ではありません。返すことは約束しないからね。
ということは?民法の賃貸借の項の適用はない、んでしょうね。
じゃあサブスクに売買契約の適用はある?
うーん、例えば「Spotify」は4000万曲の配信が売りです。
1曲でも権利が切れたら瑕疵担保、じゃなかった契約不適合責任を問われる?
訳ないですよね。
実際のところ、サブスク契約において売り主側に問われる責任で分かりやすいところは、
優良誤認と年齢確認ぐらいのもんで、
あとはあのクソ長い利用規約に書いとけばOK、ってなもんです。
確認しなかった買い主が悪い、と。
だから最近話題になった、1万円で納豆食い放題のアレ、売り主の責任はどうなるんですかね?
内容はサブスク契約が近いですが、始まりはクラウドファンディングです。
利用規約に書いてあったら、買い主の善意につけ込んでもOKなんでしょうか。
他にレンタルに代わる手段として、リース契約が考えられますが、
こちらも特に民法に規定されている訳ではありません。
保守修繕は買い主(借り主)側に義務があり、滅失等の危険負担も買い主側が負担を負うなどは、リース契約の積み重ねによって生まれた暗黙の了解でしょう。
ちなみに民法で規定されているような、賃貸借のような契約を典型契約と呼び、
リース契約のような規定のない契約を非典型契約と呼びます。
非典型契約は契約書が第一。中身は要確認です。
だから本当は、サブスクだろうが何だろうが、あのクソ長い利用規約は読まなきゃ不利益被るのは自分なんですぜ?
俺も読まないけどね。
他に、賃貸借という典型契約でCDレンタル以外で思いつくのは、
レンタカーぐらいでしょうかね。動産では。
賃貸借 不動産
こっから先は不動産投資に興味あるかたには特に読んでいただきたいです。
まず大前提です。不動産の賃貸借で人が居住する前提ならば、民法より借地借家法が優先すると思って結構。
例として民法604条に、賃貸借の存続期間は50年を超えることができない、との規定があります。短い方に規定はありません。
対して借地借家法では、
借地は最低が30年、最長の上限はありません。
借家は制限はありません、ただし1年未満と定めると、期間の定めが無いとみなされます。
この辺不動産投資をする人したい人は、是非知っておくべき項目ですね。
不動産投資に宅建資格は必要か?なんて議論をたまに見ますが、
宅建に限らず、世の中知れるんなら知っておいたほうが得するに決まってるんであり、
初代IWGP王者がハルクホーガンなのも知らないより知っておいた方が得するんですよきっと。
んじゃあ空き地を駐車場として貸した場合も最低30年?だとすると大家にはなかなか重い契約になりますが、そこはアレ。
契約の抜け道、ではなく借地借家法の適用を受けない契約を結べばいいんです。
借地借家法の適用を受ける借地契約とは、建物を所有することを目的とした賃貸借です。
なんで使用目的は「駐車場」にしましょう。更には賃貸中の駐車場への建物建築も禁止しましょう。
これで適用は民法になりました。上限50年の賃貸借契約です。
もういっちょ賃貸借の民法と、借地借家法による規定の対比を見てみましょう。
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
今度は建物がメインですね。
賃借権を登記すれば、不動産そのものの所有権者が変更になった場合にも、賃借権をもって対抗できる、という規定です。
民法改正によって、第三者にも対抗できることが加えられました。
第三者?例えば本来の所有者の債権者にして、当該不動産を差し押さえた債権者です。
所有権の移動があっても、賃借権の登記があれば、ボクは借りてるから住む権利があるんだゼ!って対抗できるのがこの条文の趣旨ですが…
過去何度か述べましたが、現実問題賃借権なんて一々登記しません。
貴方がマンションを借りて、その区分所有建物に賃借権打ちますか?
これも何度も述べましたが、登記は権利者と義務者の共同申請が基本です。
大家さんに手伝ってもらって、登記用の税金払ってまで登記しますか?
メンドクサイは非モテの始まりですよ、は置いといて。
じゃあ大家が変わった場合に、違う大家から退去を求められたら、賃借権の登記をしていないので対抗できませんから、求められれば退去しなければいけませんよね。
この流れが民法605条。
対して借地借家法の重要条文を見てみましょう。ちょっと長いよ。
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
借地借家法の26条とは、簡単に言えば通知です。
しかし通知だけでも賃貸借の解約はできません。
正当事由なーんて曖昧極まる言葉で、賃借人の退去を軽々しく行えないことを表しています。
もういっちょ、借地借家法の重要条文を見て見ましょう。
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
605条の賃借権の登記だぁあ?そんなもんイラネ。なんですよ。
引き渡しがあれば登記なく対抗できる。
28条との合わせ技で考えれば、大家さんが一度建物を賃貸に出して引き渡した場合は、賃借人の立場は非常に強くなるということです。
別ページの過去問復習でも少し触れました。民法は民法で規則として大事なんですが、
民法は基本。民間人が守るべき規則のベースの部分であり、対して特則が作られた場合は特則が優先します。
優先しないのは憲法ぐらいじゃね?
憲法最強!あーボクも心意六合拳ぐらい習っとけばよかったワー。
賃貸借 不動産 重要条文
さてここからは民法の勉強というより、不動産投資家向けへの勉強となるような条文を紹介していきましょう。
民法606条 賃貸人による修繕等
1、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2、賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
土台が腐ったなら修繕しろ、ってなことです。
ちなみに判例において、賃貸人が修繕をしない場合は、賃借人は賠償の限度において賃料の支払いを拒むことができます。
不動産投資家は、修繕ケチってたら家賃収入なしの本末転倒になりますなぁ。
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
例えば建物の修繕が必要だからといって、いっそこの機会に和室を洋室へリフォームだ!
なんてやって賃借人がヘソ曲げたら、賃借人は退去する権利があります。
不動産投資家は、修繕の見極めも必要ですなぁ。
民法608条 賃借人による償還請求
1、賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2、賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
必要費とは、現状を維持するための費用ですね。
エアコンが壊れた!で賃借人が代わりに修理代を立替えたら、賃貸人はすぐに賃借人に払わなければいけません。
有益費とは、たとえばトイレをタンクなしウォシュレットに賃借人の自腹で変更した場合、賃貸借契約終了時に、賃貸人は終了時の現存価値分について支払わなければなりません。
いやいや不動産投資家は、退去されるのにカネ請求されるなんてダブルパンチですなぁ。
ちなみに賃借人が同意なく払った必要費、有益費は賃借人の負担とする、という特約は有効ではあります。
しかし有益費はともかく、必要費は賃借人の目的を達するためにやむなく必要だった場合は、この特約も判例で認められず、大家負担となるケースが多いそうです。
1、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
ま、ごく簡単に。
天災等の危険負担は大家ですよ。投資家さんマジ大変じゃね?
最後にして民法改正における不動産投資家向けハイライト。敷金の規定の条文です。
1、賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2、賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
敷金は返せ、と明確に条文化されました。
一昔前は礼金と一緒に、不動産屋に収めて帰ってこないもの扱いされてたお金ですが、
これからは返還しなければならない、とまで厳しい言い方で指摘しています。
まぁ改正民法よりも少し前から、良心的な不動産屋や大家さんは、敷金をきちんと返還していたようではありますね。
敷金返還には賃借人側にちょっとした穴があります。
すなわち、原状回復費用にあてた敷金ならば、賃貸人側は返還しなくていいよ、とのこと。
ちなみに何度も繰り返しましたが、建物明け渡し請求と敷金返還請求は同時履行の関係じゃないですからね! 明け渡しが先!!ここは賃貸人有利なところ。
宅建士受験者は覚えとき、損はさせまへんがな。
原状回復を拡大解釈する大家もいるそうなので、賃借人側が退去時に敷金返還請求をする場合は、入居時の写真を撮っておいた方がいいかもしれませんね。
つーかこんな事書いてますがボクとしては不動産投資家の方へ肩入れしたいんですよ。
ボクも暇を見てはボチボチ良さげな不動産探して、収益計算して、投資家日記もブログで始めることでブログ集客&不動産収入でウハウハを夢見るピュアボーイな訳です。
んで実は付き合いがある銀行のちょっと偉い人に、ジャブのつもりで収益計算表持っていって「ボクちんお金借りれますかぁ?」とそれとなく聞いた訳ですよ。
そしたら担当さんてば稟議通るか試してみる、までやってくれてイヤイヤマジでごめんなさい、ボクはジャブのつもりであり鉄山靠放つつもりは無かったんですって。
ちゃんと事業計画書書くからっ!これで終わりじゃなく次も相手してー!!
とまあボク程度でもこんなですし、不動産投資を考える人は同志として是非応援したいです内心はマジです。
でもさぁ、表面利回り5~6%にカネ突っ込んで「不動産投資だ~」ってやってる人、結構いらっしゃるようですがなんでボクより遥かに学歴高いであろう人が加減乗除の計算すらできないしないというのは疑問の疑問、大疑問ですよ。
んまあ蟻地獄に一回ハマるのも快感なのかもしれないスなぁ。俺の反面教師だけどね。
いや話が脱線しました。賃貸借はまだ続きます。
おまけで言っておくと、年利回り7%超え、且つ元本保証を謳う投資は詐欺と疑って構わないと個人の意見で思いますぜ。
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