民法 譲渡担保

学習

さて譲渡担保とは何でしょうか? 譲渡したものを担保とすることです。



今宵はここまでに致しとうござりまする。




分からんものをやるなという話なんですが、何せ民法で特に規定されていないものなので、説明するべき根っこが無く難しい権利であります。

つか条文にないなら民法じゃなくね?記事タイトルに偽りアリ?
と思うのは狭量の為せる仕業ですよ、担保とっての権利関係やら後始末やらはまさに今まで学んだ、担保物権のありかたと同じ。

ならばまさにCIVIL のための LAW なのであり、
それを構成しているのは、条文ではなく過去の判例なのです。


言い訳能書きはこれぐらいにして、譲渡担保とは?を過去の担保と比較して見ていきましょう。



譲渡担保とは、財産権や所有権に対して担保設定することです。

抵当権との違い、さて何でしょう?
所有権が担保になりますので、債権者へ所有権が移転するのです。
弁済があればもういっちょ所有権は移り、元通りにはなりますが。



さらに抵当権との違いを続けます。
抵当権は不動産に設定可能な担保物件です。以下は譲渡担保の場合。


債務者の自宅に不動産が譲渡担保設定されたとします。債権者が所有権をもっていますので、
本来使用収益出来るのは債権者です。
まこの辺は契約によりますので、債務者が債務不履行あるまでその建物を使用できる、ような契約を結ぶのが一般的だそうですが、



債権者に対して賃料を払う、なんて契約も可能です。 
その賃料を債務の利息とする、など、契約自由の原則ってやつ。

当然ですが、債務者ではなく、第三者の不動産にも譲渡担保設定は可能です。


もっと続けます。抵当権設定者が弁済できない場合は、抵当権者が担保を競売にかけ、その代金で弁済を受ける。のが流れでした。


しかし所有権が移るとなると?
弁済できないのであれば、該当不動産はそのまま債権者の所有物になります。

そして債権債務には消滅時効がありますが、所有権にはありません。
譲渡担保は先に所有権を移転しているので、実質は債権者は時効にかかりません。


譲渡担保は所有権が移るので不動産の場合は当然登記される、のが原則です。
しかし登記されるのは所有権の移転であり、債務や債務の弁済期は登記されません。
見た目はキレイな不動産登記事項証明書の完成でありますよ。


そう、譲渡担保とは約定担保物権ですが、その場合の物権は実質所有権に基づくものなのです。


なので例えば譲渡担保を設定した債務者が、弁済期前に弁済したとします。
しかし譲渡担保権者が、担保となる不動産を第三者に売ってしまい、第三者が登記を備えました。

不動産の所有権は?第三者です。

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譲渡担保 動産

譲渡担保の言葉通り、動産にも、また債権にも譲渡担保設定が可能です。

質権でも例で出した、敷金返還請求権を譲渡して、カネを借りる契約も可能です。
そのカネを弁済したら、敷金返還請求権が債務者に返還される、と。



注意点が1つ。敷金返還の債権を持つAと、敷金返還の債務を持つBがいたとします。
AがCに当該敷金返還請求権を譲渡担保として提供し、カネを借りました。

Aが債務不履行となった場合、当然CはBへの債権を持っていますが、
第三者への対抗のためには、債権譲渡があった確定日付のある通知をするか、
債権譲渡に対するBの承諾が必要となります。

担保契約ではありますが、民法467条、債権譲渡の規定が適用されるんですね。



んで動産への譲渡担保設定です。 こっちは質権と比べると分かりやすい。


質権は占有の移転でしたが、譲渡担保は所有権の移転です。

占有は実際の占有が必要でしたが、譲渡担保だと占有改定、
つまり占有の代理人(債務者が代理人でもOK)が、債権者の為に占有する意思表示をした場合に、
質権だとしたら成立しませんが、譲渡担保は成立します。


ただし、動産の譲渡担保の第三者への対抗要件は、目的物の引き渡しです。
例えばパソコンに譲渡担保設定し、譲渡担保権者は銀行、設定者の占有改定で譲渡担保が成立、パソコンは債務者である本人が使用していたとします。


銀行は占有していません、第三者に対抗するにはどうすればいいでしょうか?


銀行は当該パソコンに、「本件動産を所有する」等の表示をし(シール貼っとくとか)、登記ではないものの公示をすれば、第三者に対抗が可能です。

また動産には登記できない、のが原則でしたが、動産譲渡登記という制度が施行されました。譲渡人は法人に限定されますが、この登記で第三者に対抗も可能です。


譲渡担保の実行

実行の形は2つあります。

1、帰属清算型

担保目的物を自分のものにする
2、処分清算型

担保目的物を売却して、代金を弁済にあてる。



譲渡担保は判例によって決められた、ちょっとフワフワした約定担保物権ですが、
担保権を実行するには清算しろ、とははっきり言っています。

で清算した場合に担保目的物が、本来の弁済額より多ければ、残りは債務者に返済しなければいけません。


これ帰属清算型だとどうなるのかしら?担保が不動産だとしたら、実売価格は路線価の6~7掛け言われてるから、帰属の方が不利になると思うんですがそこまで調べる気はナッシングです。


ついで。譲渡担保設定者が、弁済期前に弁済を止めて受戻しを放棄し、清算金を請求することは出来るでしょうか?

当然ダメです。そんな事するなら担保じゃなく売却しろって話。




最後に、譲渡担保権設定者と譲渡担保権者の同時履行の関係を見てみましょう。


設定者がそのまま自宅に住んで賃料を払っていました。担保権者の清算金の支払いと、自宅の引き渡しは同時履行の関係?→です。

敷金返還請求権と賃貸物件の明け渡しは同時履行の関係、ではない点と注意しましょう。明け渡しが先。

担保権者が建物に住んでいました。設定者の弁済と、担保権者の引き渡しは同時履行の関係?→ではない。

弁済が先。引き渡しが後。
前もちょっと述べた通り、同時履行のパターンは複雑怪奇です。
なんか負担が軽そうな方が先、ぐらいにしときましょ。



この欄を書くために色々調べていましたが、
いやー、譲渡担保怖いっす。担保権者、まぁ大抵は債権者でしょうが、圧倒的に有利な約定担保物権じゃないですか。

なので今回はおふざけは控えめです。
担保を入れるなら質権や抵当権を先に考えましょう。
それと契約書も注意。約定なんで、もし「これは譲渡担保です」なんて一文が入ってたらと思うと…

今宵はここまで。

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